大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和43年(家)8065号 審判

申立人 佃屋○○

主文

申立人の本件申立を却下する。

理由

一、本件申立の要旨は、

申立人の「佃屋」という氏は、変つた氏であり、また読みにくい氏であるため他人から正しく読まれたことがなく、「つくや」を「つくだにや」とか「つくだや」とか読まれて申立人はその都度不快な思いをし、また、申立人は現在、クラブ「○○○」にウエーターとして勤務している関係上、接客の機会が多く、職業上も不利益を蒙つているので、この際「佃屋」の氏を「田代」に変更したいので本申立に及んだというにある。

二、よつて判断すると、申立人の氏「佃屋」が「つくや」よりもむしろ「つくだや」と読まれること、及びその度に申立人が不快な想いをするであろうことは推認できるけれども、佃屋を「つくや」と読むことを難読ということはできないし、また珍奇ということもできない。また、「つくや」を「つくだや」と読まれることによりそれが申立人をさすことは容易にわかるものと考えられるから、それが誤読されやすいとしても人の呼称として、人格の同一性の認識に混乱を招く程の誤読とも解されない。

また申立人が変更を求める「田代」という氏は申立人本人審問の結果によると、申立人が単に気に入つているというに過ぎないことが認められ、申立人が「田代」に変更しないと日常生活に差支えを生ずるほどの通用性があるものとも認められない。

然るときは本件申立は戸籍法一〇七条一項の、氏を変更する「やむを得ない事由」があるものと認められないから、申立人の本件申立は不相当としてこれを却下すべきものである。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 野田愛子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例